血管の若さを取り戻す

血管の若さを取り戻す

血管の若さが体全体の健康に通じる

血管の若さが体全体の健康に通じる

研究会:血管のお話に戻りますが、男女比ではどちらが危険でしょうか。

桜田:実は私も意外だったのですが、血管の内皮機能を調べたところ、男性よりも女性、それも若い女性に血管年齢が実年齢より高い、つまり血管の老化が進んでいる人が多かったのです。

研究会:そうなのですか。心臓病や心筋梗塞など男性の方が多いようなイメージがあったのでちょっと意外ですね。若い女性に多い理由として挙げられることには何がありますか?

桜田:はっきりしたことはわかりませんが、間違ったダイエットをして空腹になった時にお菓子などを食べて逆効果になり、以前に比べ若い女性の喫煙率が高くなっていることも関係しているのかもしれません。また血管機能の悪い方に話を聞いてみると、冷え症という方が多かったですね。血のめぐりが悪いということでしょうね。

研究会:血管の状態は様々なところに関係しているのですね。

桜田:内皮機能が低下すると、心臓病に限らず、体のあらゆる臓器に影響があります。逆に言えば内皮機能を改善すれば、体全体のすみずみまで血流が良くなり健康になるということも言えますね。

研究会:今までのお話を整理すると、①生活習慣病が若い人に広がっている。②生活習慣病はまず血管に現れ、心臓疾患にも影響を及ぼす。③血管の内皮機能の健康を取り戻せば心臓だけでなく体調もよくなる、と。

桜田:病気というのはメカニズムが複雑なので、一つの原因を特定し、証明するのは難しいことです。しかし様々な病気の源流に近いところに、血管の衰えがあるということは確かだろうと感じています。

血管の若返りは可能か?

研究会:健康な血管とはどういうものでしょう。

血管の若返りは可能か?

桜田:まず内皮機能の働きが健全であるということですね。内皮は前に述べたように、もともと血管を広げるために自らNO(一酸化窒素)を出す機能があります。しかし内皮機能が衰えてくるとその力が少なくなり、動脈硬化が始まります。

研究会:すでに動脈硬化になった血管や心臓の冠動脈は修復できるのですか?

桜田:動脈硬化の進行した血管では修復は困難ですが、初期の段階では血管の内皮機能を改善し、NOレベルを上げてやると、すでに症状が出ている疾患を改善するということはわかっています。一方、心臓の症状を抑える目的でニトログリセリンを投与しますが、これは外部からNOを摂取しているようなものです。しかし薬の効果がなくなればまた発作を起こします。つまり血管の内皮機能自体が良くなっているわけではないのです。

研究会:NOがキーワードですね。処方薬でNOを増やすものはないのですか?

桜田:NOを増やすお薬というのはあまり見当たりませんね。コレステロールや血圧を下げる薬の中に多少そういう機能を持つものもありますが、効果は期待できないレベルです。たとえば冠動脈が悪くなると胸が痛いとか苦しいという症状が出ます。その症状を抑えるために血管を広げるような薬を使いますが、それによって内皮機能自体が良くなっているわけではありません。効果は一過性で、薬が切れればまた発作を起こします。ですから内皮機能を正常に近づけることが根本原因を改善することにつながります。

研究会:心臓の薬は血管の内皮機能を回復するわけではない、ということですね。

桜田:そうです。ですから処方される心臓の薬と併用して、血管の内皮機能を高めNOレベルが正常になるようなものを積極的にとるのが効果的だと思っています。

スイカのシトルリンに注目

スイカのシトルリンに注目

研究会:では、血管の内皮機能を高めるような食べ物はありますか?

桜田:あんまりないですよね(笑)。ただ最近、スイカが含むアミノ酸の一種、シトルリンが血管のNO産出量を増やして血流を良くすることが知られてきました。

研究会:シトルリンはサプリメントでも出ていますが、患者さんにすすめられたことはありますか?

桜田:病気のタイプによっては狭心症の薬と同時にサプリメントを勧めることもあります。そしてかなり手ごたえを感じています。サプリを飲んでいる方に、FMD(血流依存性血管拡張反応)という検査をするとたしかに内皮機能の数値が良くなっていますね。ただしその数字だけで、直ちに客観的なデータとは言えません。数値はその時のストレスの状態とか、食事など他の要素でも簡単に変わりますから、条件を一定にして検証しないと正確なものは出せませんね。

研究会:実際に患者さんを診察になった感触はいかがでしょうか?

桜田:かなりいいですよ。とくに症状の重い人ほどはっきり効果が現れますね。3か月も続けると、「今回は一度もニトログリセリンを使わなかった」とか「歩いても快調で苦しくない」とだんだん良くなっていくのを患者さん自身が感じていらっしゃいます。そして症状の重い方ほど長く飲み続ける傾向にあります。逆に、症状の軽い人は処方薬で症状が消えると、サプリメントをやめてしまう方が多い。ただし、症状が消えているのは処方薬の効果であって、血管そのものが健常な状態になったわけではないので、自覚症状がなくなってもシトルリンはとり続けたほうがいいと思いますね。

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